心象風景

なんですか、これ

【感想】『ヴァチカンのエクソシスト』を観てラテン語の大切さを学べ

Q.君たちはどう生きるか
A.エクソシストとして生涯に数万回の悪魔祓いを行う

 

2023年7月14日(金)に公開された祓魔師(エクソシスト)が悪魔を祓うホラー映画『ヴァチカンのエクソシスト
世間では同日に公開された宮崎駿監督のジブリ最新作でビジュアルの鳥以外何も分からないことで話題の君たちはどう生きるかや、大人気アニメの最新作『五等分の花嫁∽』に埋もれて影が薄くなってしまった本作。
いや正直に言うと私も『君たちはどう生きるか』の方を先に観ました。でも勘違いしないでほしい。これは宮崎駿ブランドの保証がある上で何も情報が公開されていない映画を観るという映画体験に惹かれたから優先しただけで、別に『ヴァチカンのエクソシスト』を蔑ろにしたわけではありません。純粋に映画の内容に向き合うという意味では本作の方が上と言えます。誰に言い訳してるんだこいつ。


本作についてですが、
まず異様に"""圧"""を放つポスタービジュアルから繰り出されるエクソシストの文字。
こ、こんな面白そうな映画が話題に埋もれるなんて許されていいのか……?
何と言っても本作の主演はあのラッセル・クロウグラディエーター』や『ロビン・フッド』で圧倒的"暴"のイメージが定着している俳優です。最近だと『アオラレ』で狂人ドライバーをやったり『ソー:ラブ&サンダー』でクソみたいな神ゼウスを演じている。
そんな彼がエクソシストとして悪魔を祓うのがこの『ヴァチカンのエクソシスト』。もう悪魔を暴力でねじ伏せている絵面しか思い浮かばない。こんなの絶対面白いだろ。


巷では『ヴァチカンのエクソシスト』を略して『ヴァチクソ』とかいう呼ばれ方しているらしい。ヤンキー漫画のタイトルみたいになってない?

 

感想

舞台は1987年。
我はレギオンだのサタンだのベヒーモスだのと言い張る悪魔憑きの男に対し、ガブリエーレ・アモルト神父は「そんな凄い悪魔なら豚にも乗り移れるんだよなぁ?」と煽り「余裕でできるわ!」と乗せられた悪魔が豚に憑依した瞬間に豚を射殺。悪魔祓い完了。
掴みがばっちりすぎる。そんな三枚のお札で和尚が山姥を小さくさせて食べたやつみたいなノリで祓魔するんだ。

 

今作の主人公となるのがこのエクソシストモルト神父
祈りよりも拳で悪魔を祓いそうなアモルト神父ですが、普段は小粋なおふざけを入れたり、ジョークを交えながら話したりと親しみやすい人物です。移動もスクーターという意外性を見せ、その姿は一瞬『ゆるキャン△』の一場面かと錯覚するほど。もはやあざとさの塊みたいな存在。可愛いキャラクターランキング2023を開催したら余裕で上位を取れます。

しかしそんな彼の職業はカトリック教会教皇お抱えの悪魔祓い、「チーフエクソシスト」である。
モルト神父曰く、「悪魔憑きの98%が精神疾患か何らかの病気」とのことらしい。そんな「時間停止ものAVの9割はやらせ」みたいな話ある?
そして教会上層部からは厄介者扱いされているというオタクの大好きな要素を詰め合わせたキャラクターとなっています。もはや五条悟と言っても過言ではない。
そんなアモルト神父が教皇から直々にある少年の悪魔祓いを依頼され、凶悪な悪魔と対決するというのが本作のあらすじ。


事件の発端はスペインのセバスチャン修道院。この建物の修復工事の立ち合いのために建物の所有者である母、娘、息子の三人家族が引っ越してきます。工事の立ち合いにかかりきりで子供を放置気味の母親ジュリア、反抗期の不良少女とかいうザ・ホラー映画被害者キャラなエイミー、父親の事故死を目の当たりにしたせいで塞ぎ込んでしまった男の子ヘンリー。この三人がホラー映画犠牲者ポイントをひたすら獲得していく中、工事中の事故により封印されていた悪魔が蘇る。そして犠牲者ポイントが一番高そうなエイミーを無視して一番ポイントが低そうなヘンリーに取り憑く。
悪魔が「司祭を呼べ」というので地元の神父トマース・エスキベルを呼んだら「お前じゃねええええええええええええええええ!!!!!!」と物凄い勢いでトマース神父をぶっ飛ばしながらキレた。理不尽すぎる。
というわけでアモルト神父が呼ばれることになります。


モルト神父とトマース神父の二人で悪魔祓いをするわけですが、まずこの悪魔が強すぎる。
誰にも話していない事だろうが何だろうが知っている悪魔の知識力で相手の冷静さを削ってくるし、加えて幻覚による直接的なトラウマ刺激も行ってくる最強の煽りカスっぷり。更にポルターガイストで物理的に攻撃もしてくるという、精神面と物理面両方の攻撃性がカンストしている厄介極まりない敵となっている。
本来は祈りを以て悪魔を祓うのだが、最強の煽り能力で祈りを妨害してくるため簡単には祓えない様子。罪の告白をしていなかったトマース神父はともかく、罪を告白済みのアモルト神父ですら幻覚により祈りを行えない始末。
ちなみに祈りの詠唱はラテン語なのでエクソシスト目指す人は今すぐラテン語を勉強してください。


このままでは祓えないということで、悪魔の力を弱めるために悪魔の名前を調べる方針に転換。
モルト神父は井戸の中が遺体の並べられているダンジョンになっていることを発見。ここ今世紀最大のスクーター大活躍シーン。
井戸内部は修道院地下へ繋がっており、そこで判明するのはカトリック教会の忌むべき汚点。過去の異端審問は悪魔が教会を乗っ取った末に行われた暴虐だった!こうして悪魔の罪状が更に重くなりました。ちょっと悪魔に責任被せすぎだろと思わなくもない。


そして明らかになる悪魔の真明。
その名は地獄の帝王"アスモデウス"。
ソロモン72柱が一柱にして、七つの大罪における"色欲"を司る大悪魔。
めちゃくちゃ強いのも納得のビッグネームです。やってることは子供に取り憑いて教会内部に潜り込む隙を探しているという小物染みた策略ですが。エスタークみたいな二つ名付いてるのもちょっと面白い。


真明を暴いたので大逆転と思いきやそう簡単にはいかないのが地獄の帝王。ヘンリーに取り憑いたアスモデウスを祓った直後に判明する更なる能力。
複数憑依。
姉のエイミーにも取り憑くことで完全な祓除を回避していた。なんかここだけ妙に能力バトルの味わいがあるな。
そして全員を助けるために自分から取り憑かれてしまうアモルト神父。自分の命ごとアスモデウスを祓おうとするが、アスモデウスも全力で阻止にかかる。ここ傍から見るとラッセル・クロウの一人芝居なのでシュールな絵面が襲い掛かってきます。
ジュリア一家は無事に逃げられたが、なんとトマース神父だけはアモルト神父を救うために戻ってきました。もはや悪魔祓い初心者ではなく歴戦の猛者みたいな顔つきになってた。実質ラッセル・クロウ×2。
クライマックスということもあり、アスモデウスによる全力の妨害も派手で楽しい。魔法陣は展開されるし、実体のある幻覚も出すし、トマース神父は血塗れになるし、最後は爆発もする。祈りって完遂すると爆発起こせるんだ。明日からラテン語の勉強始めます。


こうして無事に邪悪な悪魔を祓ったアモルト神父。その後、残り199体いるという堕天した悪魔達を狩るためにチーフエクソシストを続けることになる。多すぎだろ。ソロモン72柱軽く超えてるじゃねえか。
信頼できる仲間がいるから大丈夫だ、と相棒に任命されたトマース神父。完全にその場のノリで決まっていたので巻き込まれたトマース神父が可哀想で仕方ない。
あと途中死にかけて普通に生き返った教皇、なに?


ガブリエーレ・アモルト神父は2016年までに生涯で数万回の悪魔祓いを行った。
悪魔との戦いを記録した「エクソシストは語る」は名著である。
これ実話なの!?!?!?!?!?

まとめ

思っていたよりもだいぶ真面目な映画だった。
「私は許そう。だがこいつが許すかな!」みたいなノリで悪魔を銃器で蜂の巣にしたり十字架を突き刺したり聖書で殴ったりする映画かと思ったので、儀式に則って悪魔を祓うという正統なエクソシスムを行うのは普通に予想外でした。全部あの力強すぎるポスターが悪い。
思っていたのとは全く違いましたが、中盤のミステリー展開はダヴィンチ・コードみたいで良かったし、終盤には悪魔が大暴れしてくれるのでテンション高めに終われる作品になっていたと思います。
しっかりホラーはやっているものの、後に引くような恐怖は無いし、直接的なグロも無し。最後は勝利で終わるのでホラーが苦手な人にも勧められるようにもなっています。
観終わってみればバディもののエピソード1といった味だったのですが、まさかモブみたいに登場したトマース神父があそこまで成長して相棒の座に収まるとはこれまた予想外でした。ただの地元の神父が壮大な戦いに巻き込まれるというのは少年漫画の王道っぽいけど、冷静に考えて主人公はアモルト神父だし別にバトル漫画ではない。
そして何と言ってもこの作品の肝は実話をもとにして作られたというところ。日常に悪魔が潜んでいることも、アモルト神父が強大な悪魔を祓っていたことも本当にあった事。カトリック教会による異端審問は悪魔の仕業だったというのが歴史の真実。流石に政治的にセンシティブすぎるだろ。
あとはラテン語奨励映画でもある。なぜなら悪魔への対抗手段がエクソシスムの祈りであり、その詠唱がラテン語のため。悪魔が実在するというのなら生きるためにラテン語を学ぶ必要がある。つまりはこの映画に込められたメッセージは「全人類はラテン語を学べ」であると言える。噂では本作を観た人の98%が帰りにラテン語の辞書を買って帰ったらしい。残りの2%はスペイン語の辞書を買ってる。


総評として凄く面白かったというわけでもありませんでしたが、続編も作れそうな終わり方だったので続きが公開されれば観に行きたいです。強大な悪魔は残り199体いるとのことなのであと199作つくれるのは間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PG12なのでおっぱいも出ます。