心象風景

なんですか、これ

安達としまむら -特典小説③『ムラ』 感想-

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皆さんお元気でしょうか。
私は今、宇宙にいます。
地球を内包する銀河とは違う、どこか遠い別の銀河。恐らくそんな場所です。
目の前には燦々と輝く極大の光。これがこの辺りの星系の中心となっている恒星なのでしょう。不思議と身体も瞳も焼かれる事はありません。
周囲を見渡すと、青い星、黄緑の星、茜色の星、亜麻色の星、臙脂、京紫、煤竹、様々な色の星が楕円軌道に乗り漂っています。
瑠璃色の星は灼熱の星。太陽系で言えば金星が近いでしょうか。
山吹色の星は巨大なガスの星。これは木星を想像してもらえればこの景色と一致するかと。
そして緋色の星。どうやらこの星には生命体が文明を築いているようです。ヒトが住んでいるのかは分かりませんが、ここもきっと、地球と変わらず命の営みがあり、繋がりがあり争いがあり、そして愛があるのだと思います。
私たちの住む世界の外にはこうして星が在って、銀河が在って、また違う銀河が在って、宇宙は止まる事無く膨張していて、そんな知らない場所でも私達とは異なる私達が誕生して――。

 

ふと目が覚めた。
目に映るのはよく見た部屋の天井。どうやらいつの間にか意識が飛んでいたようだ。
一呼吸置き、さっきまで何をしていたのかを思い起こす。たしか、本を読み終わったところだった。
そう、アニメ安達としまむら3巻特典小説『ムラ』を。

 

安達としまむら Blu-ray 3(特典なし)

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  • 発売日: 2021/02/03
  • メディア: Blu-ray
 

  
読みました。
ヤヴァかったです。
ヤバかったので、感想とかをまとめようと思います。

 

ちなみに以前の安達としまむら記事はこちら。

kokoroch.hatenablog.com

kokoroch.hatenablog.com

 

公式の試し読み

 

感想

未来パート(前編)

お馴染みの3700年後のどこか。
チトシマと出会えたはいいが、どう接すればいいか分からず滝の裏側でサボっていた。
そこにヤシロがやって来る。チトはヤシロとの会話の中で、チトがシマで出会った意味を教えられます。
このあたり、完全に『運命』の話ですね。運命についての詳しい話は以前の記事で散々語ったのでここでは触れませんが。
チトはシマと出会うために生まれてきて、ヤシロは二人を出会わせるためにここに来たと。安達としまむらの再演といったところですかね。
何やらチトとシマが出会うことで欠けた丸が綺麗な丸になる、そんな話らしい。
この辺は少し考えることが多いので後ほど考察で。

しまむら家にて

場面は現代に移り、安達がしまむらの家に押し掛けてきたところから始まります。
挙動不審な様子で、温泉に行こうと安達がしまむらを誘いました。しまむらは承諾しました。安達が帰りました。
……ツッコミどころ、とにかくツッコミどころが多い!!!!!
まずしまむら、温泉旅行と「そういうの」が繋がるあたり安達に負けないくらい頭がピンク色
そして「きっと好きだし」ではない。どう見ても大好き以外の何にも見えないのですが。
「いいか、行こう」、いいんだ。
平静を装いながら部屋出て扉を閉めた瞬間、大慌てで去っていく安達は光景が目に浮かぶようで面白かった。
準備として「勉強」について考え始めるしまむら。ヤる気満々すぎる。
「またわたしの裸を見たいんだなぁ」、裸を見てその先に進みそうですけど。

……まぁなんというか、随分踏み込みましたね。まだキスもしてないのに体の関係にまで進展しようとは
キスは少し前に済ませていた

 


え?

 

 

 


キスは少し前に済ませていた

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の事実に思わず身体が飛び跳ねて、思いっきり机に膝をぶつけた。
痛かった。

旅館の部屋

近場の温泉旅館にやって来た安達としまむら
なんやかんやあって安達がぶっ倒れる。ここの描写勢い良すぎて笑った。
いやなんか、安達は当然として、しまむらもだいぶ意識してますね。安達が自分の事をそういう目で見ているのかとか、どういう雰囲気がいいのかとか真剣に考えてるあたり、もうその事で頭がいっぱいの様です。
この特典小説をもって安達としまむら官能小説になってしまうのだろうか。

温泉パート

安達を休ませて、自分の頭を冷やすためにしまむらは一人で温泉へ。そこにヤシロ登場。どうやらテレポートしてきたらしい。
ここは特筆するような事はありませんでしたが、とりあえずヤシロが来てくれてよかったね。ヤシロがいなかったらしまむらはたぶん、温泉でもずっとその事が頭から離れなかったと思います。

しまむら帰還

ヤシロと別れて、覚悟を胸に部屋へ戻るしまむら。布団を敷いて気合を入れている安達。やる気満々すぎる。
ここでの安達の主張は非常に良かったです。
しまむらとはそういう事をしたいわけじゃない、でもしたい、みたいな。要は、しまむらと一緒にいる事が何よりも満たすべき一番の望みであって、しまむらとそういう事に及ぶのはあくまでその延長線上にある願望であると、安達はそういう事を言いたいのだと思います。
私の解釈と完全に合致して最高でした。安達はしまむらとの関係を大切に考える子ですよね。
安達の気持ちを受け取ったしまむらはこう告げます。

「安達とやりたいことを見つけてきた」

え、なに?マジでR-18に突入するの?

卓球

卓球でしたね、やりたいこと。ヤる気満々だった安達の理解は完全に置いてけぼりである。
とりあえず、安達のご希望は後回しらしい。……後でやるのか。
ピンポン、それは安達としまむらの原点。かつて感じた空気、あの頃には無い結びつきを味わいながら二人は笑い合う。
そしてしまむらはついにモノローグで心の内を呟きます、「愛してるぜ」と。
……何これ、安達としまむら最終話か何か?

未来パート(後編)

滝裏にシマがやって来て、目的を果たしたヤシロは二人の元から去っていく。一旦帰って来るけど。
どうやらチトはシマの容姿に心を惹かれているらしい。なんだか、初期の安達としまむらを思い出しますね。
チトはしまむら似らしいけどシマとのやり取りを見るに安達っぽくもあります。
シマは外見の描写的に安達似でしょうね。でも性格的にはしまむらの方が近そうです。
何なんでしょうね、この二人。
今まであてもなく生きてきたチトは、シマと一緒に生きる事を願えるようになりました。手を繋いで、自分のものではない懐かしさを感じます。
なんだ?こっちも最終回か?
いやヤシロもいなくなったし本当に最終回になりそう。

考察とまとめ

この特典小説は法で取り締まった方がいいです。迂闊に摂取すると意識が文字通りトリップする。

ではまず運命の話。
ヤシロ曰く、チトとシマが出会ったことでこの世界は安定するだろうという事らしいです。これは世界の構成要素の話ですね。安達としまむらが必ず出会うことで世界が世界たり得るという話です。
3700年後の世界では当然、安達としまむらは既にこの世からいなくなっています。では何が代わりとなってこの世界を構成しているのでしょうか。
恐らく、無かったのでしょうね。
なのでこの世界は安定を失い、チトのいる星は滅びを迎えている。そういう事が考えられます。
しかし、安達としまむらの概念を内包している存在はいると。それがチトであり、シマであると。
そしてヤシロはその二人を出会わせて、世界を安定させる役割があったと、そんな話なのでしょう。
しまむらとの約束」もこの辺りに関係しているのでしょうか。例えば、自分たちと同じような人がいて、繋がる事ができなかったら助けてあげてほしい、とか。
あと、最後にチトが感じていた「自分のものではない懐かしさ」。これこそ「安達としまむら」という概念の内包を示唆している描写ですね。
とにかく、たった一組の百合カップルが宇宙の命運を担ってるかもしれないという凄まじい話になってきました。どうなってるんだこの世界は。
あだしまパートについて。
いやまぁ、衝撃的でしたね。キスは済ませたらしいです。
金曜夕方に家にいる、高校の修学旅行、制服はまだ通用するか発言を鑑みるに、時期は大学生かな。
となると、大学生になってから初キスまで至ったか、高校の終わりの方にキスをしたかといったところでしょうか。
初キスは本編で披露してくれると助かるので、高校の卒業式で初キスとかだったら嬉しいです。場所が卓球場だったら尚良し。

追記:読み直して気付きましたが、心を見えるものにしてくれるの件で『死間』での日野との会話が示唆されていますね。つまり二十歳は超えてるようです)
そしてタイトルの『ムラ』ムラムラでしたね。
ただ、単純に性欲が煮えたぎる意味でのムラムラではなく、安達としまむら両名にとってのムラムラは、そういう関係への踏み込み方が分からない。そんなムラムラなのだと思います。どんなムラムラだよ。
とにかく、二人がそういう事も意識して関係を深めていってるという事実に感無量でした。これもう大人あだしまは完全にそういう事じゃないですか。二次創作が盛り上がってしまいますね。

 

 


……………………で、えっちなことしたんですか?

 

 

 

 

 

 

最終巻特典は『Abiding Diverge Alien』。未来パートでヤシロいなくなったけどどうするんでしょうね。